初代ドクターフーの冒険#1: AN UNEARTHLY CHILD

半世紀の歴史を持つ、イギリスの長寿ドラマ『ドクターフー』の、記念すべき第1作!ドクターのキャラ設定が固まっていない難はあるが、早くもTARDISが登場するのがファンには嬉しい!

エピソードデータ

放送日: 23 November 1963
監督:Waris Hussein
脚本:Anthony Coburn & C.E.Webber

概要

この地味な20分程度のSFドラマが、まさか半世紀以上も続く一大長寿番組の幕開けになろうとは、これが放送された1963年の時点では、いったい誰が予想できていたことでしょうか?

・・・などと恰好をつけて言ってはみたものの。裏を返して言えば、現代っ子の目には本作はあまりに地味なドラマに見えてしまうであろうことも確か。特に21世紀版のドクターフーの波乱万丈な展開に慣れている人からすると、「え? こんなノンキな展開なの?」と、違和感すら覚えるかもしれません。一言でいうと、現代っ子には、ペースが「ヌルい」んです。。。

ですが、1960年代ブリティッシュポップカルチャーという(いまや)古典としてリスペクトを集めている一時代の放つ残り香を、ゆったりと時間を取って味わいたいという方 (忘れちゃいけない、この時代の「ブリティッシュポップカルチャー」は、ビートルズやローリングストーンズやジミ・ヘンドリクスを生み出した母胎なのだぞ!) や、

ドクターフーの「原点」はどのような雰囲気の作品だったのかをきちんと知っておきたい、という、熱心なドクターフー研究家の方や、

あるいは、1960年代のイギリス英語をしっかりとヒアリングして研究してみたいという、英語オタクな方には、

本作はたまらない魅力を持って輝いて見えることでしょう。

ヒロインのスーザンはとことん愛らしく、ドクターのキャラはコミカルで、コンパニオンであるバーバラやイアンはどこまでも気のいい「善良な一般市民」。シナリオには、余計な屈折も、穢れもない、1960年代ならではのスナオさが満ち溢れた作品になっている。これは是非とも、21世紀版のドクターフーに慣れ切った人にこそ、一度は見てほしい。こんなチャーミングな雰囲気から、ドクターフーのレジェンドは始まったのだぞ、と。

あらすじ

本作品のおおまかなあらすじは、以下の通りです(ネタバレ全開です、あしからず)。

ロンドンのとある学校の中、二人の高校教師(イアンとバーバラ)が会話をしている。彼らの生徒であるスーザン・フォアマンについてだ。この15歳の女子生徒、とても優秀なのだが、一般常識が欠けている。それも、お金の使い方を知らなかったりといったような、基本的なレベルの常識の欠落である。田舎育ちとか外国育ちとかで説明できるようなレベルでもない。お金の使い方もよく知らないままティーンエイジャーになったとは、いったい彼女の生い立ちはどうなっていたのか?それでいてスーザンは、理科の時間となると、五次元の話をしたり、時間移動の話をしたり、妙に自信たっぷりに、独自の理論を語ってくる。まるで本人が五次元の世界やタイムトラベルを経験済みであるかのような。。。彼女の家庭環境を調べると、どうやら祖父との二人暮らしらしい。では、彼女が同居しているという「祖父」に会えば、彼女の生い立ちの謎も解けるのでは? そう睨んだ二人の教師は、スーザンの家庭を訪問し、彼女の「祖父」に会ってみようとする。ところが、学校の事務室から取り寄せた、スーザンの現住所は、スクラップ置き場の住所だった! 二人の高校教師が下校中のスーザンを尾行してみると、確かに彼女は、学校に届けている通りの住所、スクラップ置き場に入っていった。そして、そこに置いてあった警察用の電話ボックス(TARDISだ!)の中に入ってしまった。二人の高校教師がその電話ボックスを調べていると、スーザンの祖父が外出から帰ってくる。「何をしているんだ? いまどきの高校教師は生徒を尾行までするのか」とオカンムリなおじいちゃん(まぁ、これは確かに(笑))。ちょっとケンカめいた議論になってしまった高校教師が、強引に電話ボックスの中に入ると、あれあれ不思議、電話ボックスの中はかなり広い、計器や操作盤に囲まれた宇宙船内のような部屋。スーザンの祖父(=初代ドクター)は、「我々の秘密を知ってしまったからには、1960年代のロンドンに帰してやるわけにはいかんな」と言いながら、操作盤を操り始める。この電話ボックスは、実はタイムマシン。ドクターとスーザンは異星人で、この電話ボックス型のタイムマシン(TARDIS!)を使って地球のいろいろな時代を調査旅行しているところだったのだ。二人の高校教師、バーバラとイアンを乗せたまま、TARDISはタイムスリップを始めてしまい、まだ文明前発生前と思われる、原始時代のイギリスに到着した。すると、毛皮を着ている直立歩行の人影が、突然現れた電話ボックスのほうをじっと見ており、、、ここで「来週につづく!」

21世紀版のドクターフーに慣れている現代の視聴者がこのエピソードを見たときの最大の違和感は、おそらく、初代ドクターフーが、いろんな意味で強引で偏屈で、見方によっては非道なことではないでしょうか?黙って尾行をした高校教師も悪いが、「君らを家に帰すわけにはいかん」という理由だけで彼らを旧石器時代へのタイムスリップに強引に連れ去るドクターのほうが、もっと悪いと思います。いや、これって、もはや「拉致」、犯罪だよねw。

でも、かの「男はつらいよ」シリーズでも、第一作では寅さんのキャラがいまいち完成しておらず、見方によってはただの喧嘩っ早い乱暴者に見えるような粗いキャラ設定だったわけですから、初代ドクターの無茶な感じも、まさにシリーズ初版の、スタッフたちの生みの苦しみの結果と考えるべきでしょう。

内容のさらなる細かい分析は、以下にて、少しずつ、アップしていきます。

  • シーン別徹底分析:学校内
  • シーン別徹底分析:クラスルーム
  • シーン別徹底分析:自動車内および回想
  • シーン別徹底分析:廃品置き場にて
  • シーン別徹底分析:TARDIS内