英語版『坂の上の雲』の「騎兵(cavalry)」の章から、「重騎兵」「軽騎兵」「竜騎兵」の違いを学ぶ

英語版( Clouds Above The Hill ) が出版された、司馬遼太郎の人気小説、『坂の上の雲』。

今回は、第三章に該当する、「騎兵」の章の英訳を見ていきます。この章では、主人公の一人、秋山好古が、「日本陸軍に近代的な騎兵を導入する」という生涯のミッションと出会い、その仕事にとりかかっていく様が描かれます。

秋山好古にとって、これは大変な難題でした。初期の日本陸軍には騎兵がいなかったというのみならず、司馬遼太郎の解説によれば、「日本の歴史上、騎兵隊というものが発達しなかった」「騎兵だけの部隊という発想自体が、きわめて西洋的な伝統であり、日本人にはそもそもわかりにくかった」のです。秋山好古は、西洋の陸軍にある騎兵という兵科が、そもそも何なのか、から、勉強しなくてはなりませんでした。

司馬遼太郎による解説部分と、その英訳を見ていきましょう。

騎兵は、偵察にも任ずる。しかし戦場におけるその本務は、集団をもって敵を乗馬襲撃するにあり、西洋ではこれをもっともはなやかな兵科としていた。

The cavalry is also charged with scouting.
Its primary function in battle, however, is to make mounted group attacks on the enemy.
In the West, the cavalry has always been regarded as the most splendid branch of the military.

(チンギスハンやフリードリヒ大王に次ぐ)この用法の天才はナポレオンであった。かれも白刃をふるっての襲撃を騎兵の本則とさせた。このほかナポレオンが創始した騎兵のあたらしい役割は、捜索であった。

The next genius of this technique was Napoleon, who also established the fundamental rule of that his cavalry must attack brandishing their swords. Apart from this, the new role created for the cavalry by Napoleon was investigation by scouting.

このため、ナポレオンは重騎兵と軽騎兵の二種類をつくった。重騎兵には胸甲を着せ、槍をふるって敵中に突入せしめる。軽騎兵は装備をかるくし、捜索のみに任じさせた。ほかに重と軽の中間の騎兵として「竜騎兵」というものもつくった。竜騎兵は銃を背にかついでときに徒歩戦にも任じた。

He therefore divided his cavalry into heave and light. The former wore breastplates and attacked the enemy with brandished lances. The latter were much more lightly accoutered and responsible for scouring alone. Then he created a group called “dragoons,” cavalrymen midway between the heavy and the light. The dragoons carried rifles on their backs and sometimes were expected to fight infantry battles.

男性の方なら、ある程度、わかってくれると思うのですが、、、野蛮な話とはわかっていても、「重騎兵」とか「軽騎兵」とか「竜騎兵」とかいった、近世近代の兵科の呼称というものには独特のロマンがありますね! 特に「竜騎兵(英語でいうドラグーン)」という名称は、語感がそもそも格好いいな、と思ってしまう。これはファンタジーゲームの影響かもしれませんが、、、。
というわけで、せっかくなので、これらの兵科の英名を覚えておいてしまいましょう。

【キーワード】
cavalry=騎兵
Heavy cavalry=重騎兵
Light cavalry=軽騎兵
Dragoons=竜騎兵

この関係がわかっていると、のちに日露戦争の場面になってから、秋山好古の騎兵隊が、時に偵察で、時には迂回作戦で、時には機関銃を抱えて徒歩兵に変身して(とくに黒溝台会戦の際にこの「徒歩兵への変身」というワザが日本軍全体を救います!)変幻自在に役割を変える妙が、楽しめるはずです。fbf9cb

ともあれ、日露戦争はまだまだ先の話。物語は、秋山好古という若い士官が、まったくのゼロから「近代騎兵」を生み出そうとする苦闘の日々を、爽やかに描いていくのでした。

好古は後年、「騎兵の父」といわれたが、この人物は二十四、五の下級尉官のころから日本騎兵の育成と成長についてほとんどひとりで苦慮し、その方策を練り続けてきた。

Yoshifuru was later to be known as the “father of the cavalry”, and, truly, from his days as a law-ranking officer of twenty-four or twenty-five, he was the one who worried intensely about the development and grown of the Japanese cavalry and kept devising plans for it.

さぞかし、たいへんな人生だったろうなと、思いつつ、

いっぽうで、「そんな大任を若いうちから任されるなんて、羨ましい!」とも思ってしまいます。これもまた、男性の方ならわかってくれる気持ちかと思いますが、、、いかがでしょう?

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