映画『遊星からの物体X』で英語を学ぼう!

タイトルを『物体エックス』と訳し、作中モンスターの攻撃方法を『同化攻撃』と訳したのは、いったい誰だ!?

日本であろうと海外であろうと、ネットで『物体X』ないし原題の”THE THING”を検索してみるだけで、この映画の根強いファンが、どれほど、各国にたくさんいるかがわかります。ストーリー考察にせよ、モンスターの能力解説にせよ、みんな熱心なこと。

つまり、みんな、愛に溢れている!

実際、この映画は、何度観てもいつだって、面白い!

本作こそ、日曜洋画劇場世代からの「愛され」映画なのだ!

今どきの映画からは失われた、この手作り感、ザラザラとしたビデオテープ感覚、これが。いいのです。だいいち、本作の、《凍てついたグチョグチョピクピク世界観》は、高解像度のリマスター版なんぞで観てもしょうがない。

日曜洋画劇場から録画したVHSテープを仲間内で貸し回しながら見るか、あるいは近所のレンタルビデオに自転車で乗り付けて借りてくるか。いずれにせよ、とことん、VHS程度の低画質こそが似合う世界。80年代ホラーですね!

確かに、内容は、グロテスク。でも、現代の視点で見ると、もはや笑いすら漏れてくるほどの「やりすぎメイクアップ」ばかり。現代のCGではむしろ出せない、「てづくりお化け屋敷のコワ楽しさ」。怖い。気持ち悪い。痛そう。でも、ちょっと笑ってしまう。なんて贅沢な映画体験でしょう! このような作品が、発表当時は、「青少年に悪影響を与える映画」としてBBCのニュースで非難されていたとは、今から思えばなんとのどかな話でしょうか! 宇宙からやってきた「物体X」とでもしか呼びようのない「モノ」が、次々と南極基地の隊員を「同化」していく話が、どうして少年犯罪を誘発する有害映像なのでしょうか、、、!

本作の気になる英語表現

それにしても、天才的なのは、原題の”the thing”を「物体X」と訳し、モンスターの能力を「同化」と訳した、当時の翻訳家の抜群のセンス!

だいいち、このモンスター(物体エックス?)の能力、英語では《擬態》としか説明されておりません。たとえば、最初に犬が犠牲になった直後の会話では、以下のように説明されているばかり。

That imitates other life-forms, and it imitates them perfectly.When this thing attacked our dogs, it tried to  digest ‘em, absorb them. For instance.That’s not dog.It’s imitation.
(あいつは他の生命体を擬態するらしい。そして、見事に化けてしまうんだ。
あいつが俺たちの犬を襲ったとき、あいつは犬の体を吸収し、消化し、その犬そっくりに擬態しようとしていた。
たとえば、この犬の死体だが、これはもう犬じゃない。犬を擬態したナニカだ)

これがどうして翻訳版では「あいつは他の生き物と同化するのだ」にされちゃったのか!英語版ではimitateとかmimicとか言っている。absorb(吸収)してdigest(消化)した相手に擬態(imitate,mimic)すると、わりかし、理屈っぽいことを言っている。

ところが日本語版はこれを一言で述べてしまいます。「同化した!」と。確かに、「あの未知の生物は、他の生命を食べた後にその犠牲者に化けるのだ!」と言われるより、「あの物体エックスは、他の生命に同化するのだ!」と言われたほうが、なんだかよくわからないなりに、なんか、わかるような気もする、いい感じの「理解」になる。とりあえず、「同化? やだ、同化されたくない! なんだかよくわからないが同化されたくない、逃げろ!」と本能的に思える語感がある。そう考えると、この訳語、「同化」には、「火事だ!」とか「人殺し!」とかいった言葉と同じ、「緊急事態の際にも伝わりやすいヒトコト」となっているのでした。「物体エックスだー!」とか「同化されるー!」とかいう悲鳴が近くで聞こえたら、誰だって、逃げるでしょう?

ところで、本作について、私の中には積年の疑問があります。物体エックスに「同化」されてしまった人間については、人間だった頃の記憶や知識が継承されているように見えるのですが、本人の「意識」も継承されていたり、するのでしょうか? 私としては、「継承されている」と予想しているし、そのほうが本作のホラーとしての怖さも増す解釈と思っているのですが、いかがでしょう?

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