「スペインに行ったことがないスペイン語講師」の著したスペイン語本の内容に、すこぶる感動した話

本日、ご紹介したい本、『語学の西北』は、これはただの語学書ではありません。いちおう、スペイン語に関するお役立ち雑学をたくさん仕入れられる構成にはなっておりますが、スペイン語学習者よりも、どちらかといえば、「言語とは何か」「異文化理解とは何か」について真面目に考えたい人にオススメな本。文体は軽いが、中身はかなり深い、エッセイ本といったほうがよい趣のものです。良くも悪くも著者のキャラクターがぐいと前面に出ているので、この本に共感できる人とできない人は、ハッキリ分かれるかもしれませんが。

『NHKスペイン語講座を担当していたこともある著者、後藤雄介氏は、「スペインに行ったことがないスペイン語講師」と本書の中で自己紹介してくるような、なかなか剽軽な方。たしかに、そう聞くと一瞬、「珍しい」と思ってしまうが、よくよく考えれば、当たり前。つまり、この方はラテンアメリカ研究が本職であり、スペイン本国にはまるで縁がないまま生きてきたというだけのこと。にもかかわらず、「大学でスペイン語を教えています」というと「最近のスペインのほうはどうですか?」と聞かれることにご本人もゲンナリしている。

「そもそも、スペイン語という呼称がおかしいのだ。これだけ、スペイン以外の広い国と地域で話されている言葉なのだから。たとえば、『大学で英語を教えています』と言っても、『ならばイギリスに詳しいのですよね?』とは聞かれないだろう。スペイン語も、英語と同じく、もはやスペインという国とはまるで関係ないだけの広がりをもった国際語なのだ。そのことがイマイチ理解されない」というのが、著者の言いたいことだろう。このあたりは、私も、とても共感、、、。

それにしても、この著者は、ペルー留学というなかなか珍しい体験をしている人で、笑いあり涙ありの「ペルー学生生活の思い出話」が語られる中盤がめちゃくちゃ面白い。それも、「ペルーというのは日本と比べて遅れた変な国だった」という話にはならず、「ペルーから帰ってきたら、むしろ日本の悪さに気がついた」という論点で後半が語られる。これは、本当に、偉いと思います。日本人なら無意識のうちに「ラテンアメリカは遅れている」というステレオタイプを持っていますが、それと戦ってくれている。結論から言えば、ペルーのほうが人間や社会が暖かく、そこから帰国してみると、日本人社会というのが意外なほど弱者に冷淡で窮屈だということに初めて気づいた、ということなのですが。みんなの共感を得られる話ではないかもしれませんが、少なくとも、私は、めちゃくちゃ共感しました。日本人って、よくよく細かくみると、ウワベはとても優しそうでいて意外に冷たい、、、いや、ここでは、やめておきましょうか。

いちばん、共感してしまったのは、中盤に出てくる、「語学継続の意味について」という章。

『変わる』ということ、変わった自分に気づくということこそが、語学を、ひいてはなにかを学ぶという行為を通じて得られる成果のひとつだと僕は思っている

などという、心から共感できる名言がバンバン出てくる。上の引用なんて、私のこのブログのスタンス説明にそのまま使いたいようなテーゼです。

既存の自分の生き方を強化するためではなく、何かに「変わりたい」ためにやるものではないですか、外国語というのは? 少なくとも私はそういう、モチベーションでやっております。

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