保坂道雄さんの『文法化する英語』を読んで「自己組織化する言語」というアイデアにおおいに共感した話

開拓社から出ている「言語・文化選書」シリーズは良書揃いではありますが、本書、「文法化する英語」は、私にとってはとりわけ強烈な一撃でした。

「通時言語学」というのでしょうか、内容としては、現代英語にある「冠詞」や「法助動詞」「受動態」「進行形」「完了形」「不定詞」「存在構文(there文)」「形式主語it構文」「関係代名詞」「接続詞」「再帰代名詞」「助動詞DO」「所有格」といった十三のテーマについて、「どうして今日のような形になったのか」を、古英語から中英語、近世英語にいたる歴史的変化から説明してくれる、というもの。いわゆる学校英文法の説明だけではいまいち腑に落ちなかった英語のいろいろなナゾが、歴史的な変化の経緯を知ると、とてもよくわかる!

それだけでも本書は、読んで「ためになる」本なのですが、私にとって強烈だったのは、著者が示す、以下のような言語観。

・(英語であれ日本語であれ、アイヌ語であれゲール語であれ、)それぞれの言語は、生物の適応進化のような、「生き残るための必然性」としての変化を繰り返して、今日までやってきた。

・各言語の歴史は、いわゆる自己組織化の歴史として捉えられる。カオスの海の中からしだいに秩序が形成されるように、各言語はそれぞれの「文法」をシステム化して生き延びてきたのである。

つまり、ハリネズミの針や、シマウマの縞模様のように、それぞれの言語がどうして今日のような秩序だった体系を得たのかは、生き残るための合理的な選択の歴史から説明できる、と見る考え方ですね。

この見方を追究するならば、それぞれの言語の持つ文法なるものは、だれか特定の天才が考えたものではなく、ちょうど雪の結晶のように、自然に生成されたシステムだ、ということになる。雪の結晶の類推で解く言語史。この見方が正しいのかどうかは私ごとき浅学の徒にはとうてい判定できませんが、ロマンあふれる言語観であることは間違いなく、人生が変わるほどの、鮮やかな衝撃を受けた、読書体験となったのでした。

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