naranjo(スペイン語の「オレンジ」)が英語と響きあいつつアルゼンチンタンゴの旋律に紛れ込んだとき

私がスペイン語をやるようになったきっかけは、スペイン語圏の音楽。

フラメンコもフォルクローレもよいが、特に私にとっては、アルゼンチンタンゴが素晴らしい!

中でもとりわけのお気に入り曲が、Naranjo en flor. 日本のタンゴ奏者の間でもポピュラーな演目で、日本語題は「花咲くオレンジの木」。

いろいろな奏者が吹き込んでおりますが、私の好みで言えば、ちょっとマニアックな選定ながら、フアン・カルロス・カセーレス(Juan Carlos Caseres)の演奏のものがとてもいい。ピアノの左手のリズム感は「まさにタンゴ!」な歯切れの良さでありつつ、おおらかにリスナーを包む、あったかい歌声が酔わせてくれます。

▼このアルバムの二曲目にNaranjo en florが入っています。これは名演▼

カルロス・カセーレスは、タンゴ ネグロ トリオという、アフリカンなルーツを強調したタンゴ(「白人の国」という自負の強いアルゼンチンで、その国民音楽であるタンゴのアフリカからの影響を探究するなど、それだけで挑戦的ですが)のグループで活動していたので、そちらのほうが有名かもしれません(タンゴ ネグロ トリオについての詳細はたとえばこちらのサイトを参照ください)。でも私はこの人のピアノ&ボーカルのシンプルなスタイルでの演奏が好きですな。とくに、老いてから確立された独特なダミ声、おじいちゃん萌えの私には、たまらん。

さて、この曲のタイトル。

Naranjo(ナランホ)というのは、スペイン語でいう「オレンジ」のことです。それはよいのですが、なんとこの語、最近読んだある本によると、英語のorange(オレンジ)と語源が同じだ、というのだから、かなりビックリ。どういうことか、というと。。。

・そもそもヨーロッパにはオレンジはなく、古代インドが原産である。

・インドのサンスクリット語では、オレンジはnarangahだった。実はこれが、インドヨーロッパ語族における「オレンジ」の最初の名前。

・それがアラビアからアフリカを経て、スペインに入った。アラビアからオレンジの栽培技術を輸入したスペイン人はオレンジを一大産業にした。ここでインドのnarangahが、naranjoになった。

・フランスに入った時に、なぜか、頭のnが抜けた(なぜかは、謎。ただし、フランスに入るといろんなものの語頭やら語尾やらが「抜ける」傾向があるように思えるのは私の気のせいか)。

・それが今後は英語に入った時、アレンジされて(!?)orangeとなった。これが、日本にもやがて入ってくる呼び名、「オレンジ」

と、いう次第なようですが。しかし、スペイン語のnaranjoと英語のorangeが、語頭のnを抜き取ればたしかに綴りがそっくりだ、などというのは、この話を読むまで私もまったく気が付きませんでした。

インドからスタートしたオレンジが、ヨーロッパに入ってくるのに伴い、言葉も少しずつ変化しながらヨーロッパに入ってきて、今ではカタカナ語「オレンジ」となって、日本にもやってきたのだ。

そんな「オレンジの雄大な一大歴史」を考えながら、あらためて、アルゼンチンタンゴの名曲、Naranjo en florを聴くと、また独特な感動があります。こういう感動を味わえるのは、外国語マニアの特権の一つかと。

もちろん、Naranjo en flor はぜひ、発音のきれいな、アルゼンチン人ミュージシャンの演奏で聴いてくださいね。上述の不安・カルロス・カセーレスの他には、ロベルト・ゴジェネチェのボーカルに、なんとかの巨匠アストル・ピアソラが伴奏をつけているバージョンなんてのもyou tubeで見られます!

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