実語教の英訳なるものを見つけた話

昨日は、「空海さんの《虚空蔵求聞持法》の考え方は、現代の外国語学習メソッドに応用できるんじゃないか」みたいな、我ながら凄まじいことを書いてしまいました。発想としてアブナイことは百も承知。ですが私の理解しているところでは、外国語学習というものは、スキルアップのためのものでも、脳トレのためのものでもなく、カルロス・カスタネダが幻覚サボテンを服用することでインディオの精神世界を身をもって体感した話のように、心身を危険に晒して、何か「いままでの自分を越えるもの」と遭遇すること。

そのような考え方に立てば、空海さんの虚空蔵求聞持法の修行と、「あえて」外国語だけしか通じないところに自分で自分を追い込んで、日本語脳を荒っぽく破壊する外国語学習のいちばん苦しい(しかし有意義な)ところを、似ているものとして扱う私の気持ち、多少、伝わりますでしょうか? あ、もちろん、言い過ぎていることは承知で、確信犯的にこの辺りは書いています!

ところで、空海さんのことは、英語圏でどのように紹介されているのか?

そんなことを思いついて探していたら、目的のものとはいささか違いますが、面白いものを見つけた。英語圏のテニスコーチ(!?)が翻訳したという、「実語教」の英語版。しかもそれが、「弘法大師の著作である」とされ、空海さんのプロフィール紹介と一緒に電子書籍としてまとめられておりました。

実語教が空海さんの著??

たぶん訳者の方が間違ったソースを信じているのか、あるいはこの翻訳者は実際に父母から「実語教とはお大師様の言葉じゃ」と伝承されて育った人なのか。間違い、というには、あまりにも自信たっぷりなので、背景事情がどうもありそうだ。というわけで、そこにはとくには突っ込まず、素直に中身を読んでみました。

まずは英語での、空海さんのプロフィール、これがなかなかコンパクトにまとまっていて、よかった。僕も外国の方に弘法大師のことを話す時
(そんな機会があるかどうかはともかく、、、) には。こんな紹介文をそのまま参考に使いたい。

Kōbō Daishi(弘法大師) is the honorific Buddhist title given to Kūkai(空海) after his death: kōbō meaning “to spread widely the Buddhist teachings” and daishi, “great teacher.” He is one of the most respected and popular Buddhist masters of Japan. His achievements are many: founder of Shingon or Esoteric Buddhism in Japan, founder of the monastic center on Mt. Kōya, civil engineer, great calligrapher, a wandering saint, and originator of the pilgrimage circuit of 88 temples on Shikoku. He has been admired in Japan as a culture hero and creative genius.
とまあ、こんな具合。

肝心の、実語教の英訳パート自体も、なかなかよいものだった。書き出しの、「山高いがゆえに貴からず、樹があることをもって貴しとなす」は、Mountains are not magnificent because of loftiness. Mountains are magnificent because of trees.
とか、ちゃんと格調の高い語彙を選んで英訳に当てている。誠意のある翻訳であり、ご本人も空海さんと実語教が好きなのだな、と伝わってくる。繰り返す通り、空海さんと実語教を同一に結びつけるのは歴史学としては問題ありなのだけど、そういうこと、ここでは、なんだか指摘するのは野暮ったい。

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