欧州少数言語の復活を応援する話(ウェールズ語の話)

このお盆休みに読もうと思って、『国のことばを残せるのか ウェールズ語の復興』という本を購入してみました。第一章を読んでいる間に子供にのしかかられ、第2章を読んでいる間に子供に足を噛みつかれ、やっと読み終わったと思って置いておいたら、いつのまにか床に投げ出され、子供に食べられてベチョベチョになっている。おしりふきティッシュを駆使して、乾かして、なんとか復活させました、、、。

このブログの別の記事にあげた通り、外国語を勉強することの敷居がどんどん低くなっている現代だからこそ、あえて、滅びかけている少数言語を学習したい、というのが私のスタンスです。そういうわけで初めてみたウェールズ語ですが、ウィキペディア程度のソースで調べた限りでは、「欧州の少数言語の中では、消滅の危険度はずいぶんマシなほう」とのこと。ケルトの本家とも思えるアイルランドですら、英語に押されて土着言語は消滅寸前だというのに?

どうしてウェールズ語は、がんばっていられるのか。その秘密が知りたい、というのが、この本を手に取った理由でした。内容は、期待通り。ウェールズ語もまた他のケルト系言語と同じく消滅寸前にまでいったことはあるのですが、二十世紀後半から、奇跡の巻き返しが始まっている、とのこと。これはなかなか痛快な話なので、以下に要約をまとめてみると、

  • 十九世紀のイギリスの政策により、「ウェールズ語は野蛮で遅れている言語だから、ウェールズの人たちに英語を教えてあげましょう」という(善意の!)教育方針で、一気にウェールズの英語化が行われた。
  • さらに、十九世紀の科学では、「二か国語、三カ国語話者は、それだけ脳の容量を食い、知性の働きを鈍らせるので、一人の人間が生涯に使う言語はできるだけ一つがいい」という考え方が信じられていたため、なおさら、「ウェールズ語を忘れて英語を話そう」という(善意の!)キャンペーンが進行した。
  • ウェールズの人々も上記の常識を信じていたため、子供には英語を練習させ、ウェールズ語での教育はしなかった。
  • そのため、二十世紀前半にウェールズ語は危機的状況となった。
  • 二十世紀後半に世間の常識が変わり、イングランドに対する「ウェールズの伝統文化の独自性」が強調されるようになった。ウェールズ人が自分たちのアイデンティティのよすがとして、ウェールズ語に関心を持ち始めた。
  • ウェールズ語の学校教育が始まった。
  • それにより、なんと、年長者よりも若い世代の方に、ウェールズ語話者が増えるというポジティブな逆転現象が起こった
  • 若い話者が増えたので、ウェールズ語のドラマや映画も作られるようになった。それからは今のところうまくいっている

若い世代がむしろ関心を持った、というところが、ウェールズ語の奇跡の復興のキモ、と言えそうです。だいいち、「二か国語を併用していると頭が悪くなる」という迷信が薄れ、「どうせなら二か国語、三ヶ国語を喋れたほうが人生が豊か」という価値観に変わっところに、ウェールズ語復興のブームがちょうど乗っかったところが大きかったのか。

それにしても、「英語のほうが何かと有利」かつ、「二か国語を勉強させるのは大変だろう」、ゆえに、「子供にはオール英語の教育を受けさせてやろう!」という、これまた善意の親世代の想いが、言語文化に壊滅的打撃を与えたというのは、なんだかこれからの時代の言語のあり方(日本語の未来を求めたも含め!)を考えるのに、なかなか教訓に満ちた事例と言えるのではないでしょうか。

その一方で、本書の結論としては、「ウェールズ語は順調に復活している傾向だが、それでもまだまだ、いつまた消滅寸前に陥るかわからない、予断を許さない苦しい時代」であるとされています。グローバル化というのは怖いなと改めて思いつつ、なおさら、世界の少数言語を知ることへの意欲が高まる読書経験となりました。

さあ、今日もウェールズ語の練習をしようっと!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です